Billboard、アニメ、プロ野球にも!?「Drum’n’Bass」世界的ブームの再燃。 YouTube再生回数で見えてきた次に来る日本人アーティストDee Jay Key
「ドラムンベース」というジャンルをご存知だろうか?

ドラムンベース(英: Drum and bass/Drum’n’Bass)、1990年代に英国で生まれ発展した、その名前の通り強調されたドラムと重いベース、そして高速なテンポが生み出す疾走感が特徴的なクラブミュージックだ。
その全盛期は90年代後半。英国発祥のこの新しい音楽は世界中でムーブメントを生みもちろん日本でも熱く受け入れられたが、次第に聞き手を選ぶようなハード・ダーク路線などの様々なサブジャンルに派生していったこともあり、一部の人のみに支持されるマニアックな音楽になっていった。
しかし、近年。Drum’n’Bassの根幹となるあの特徴的なリズムを思いがけず耳にすることが増えてきたように思う。そう、Drum’n’Bassは今再燃しているのだ。
エド・シーラン、ラブライブ!、そしてプロ野球ORIXバファローズでも
昨年2021年11月12日、米ビルボードTOP100。初登場41位にEd Sheeranの「Overpass Graffiti」がランクインした。なんと全篇Drum’n’Bassのリズム。「エド・シーランがDrum’n’Bass!?」と驚いたのを覚えている。グラミー賞4回受賞の”一般受けする”世界的人気アーティストの楽曲に、下火になっていたはずのDrum’n’Bassの特徴的なリズムが使われたことは当時私の周りでも大いに話題になった。
だがそれは一過性のものではなかった。
以降今年に入ってからも、6月4日米ビルボードHot100シングル12位、The Kid Laroi & Justin Bieber「STAY」や1位、HARRY STYLES「AS IT WAS」など、ここにきてチャートを賑わすヒット曲にDrum’n’Bassのリズムが多用されているのだ。
そんなブーム再燃の兆候は意外なところでも見つけることができた。
今年の春放送されていた人気シリーズ「ラブライブ!」の新作「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」。楽曲の良さで定評のあるこのアニメシリーズだが、そこで挿入歌として披露されたDiverDiva「Eternal Light」、三船栞子「Emotion」でDrum’n’Bassのリズム要素がフィーチャーされた。特に前者はオリコン7位にランクイン。
さらに、昨年プロ野球パシフィックリーグの覇者「ORIXバファローズ」が、今年京セラドーム大阪の開幕からスターティングメンバー発表前の盛り上げ楽曲に、Dee Jay Keyの「HAPPY」というDrum’n’Bassを使用していたのだ。
かつては一般受けから離れディープな方向に突き進んでいったジャンルが、現在のヒットチャート上位に食い込み、さらにアニメやスポーツの日常的シーンにまで浸透しているというのは90年代のDrum’n’Bassを好んで聴いていた私としては大きな驚きだった。
Drum’n’Bass再燃のきっかけとは?
ではなぜ今、Drum’n’Bassなのか?
ひとつは、2010年代のEDMブームだろう。もともとクラブミュージックとして誕生したDrum’n’Bassは、2010年代のEDMブームに合わせて、MetrikやCulture Shock、DimensionといったアーティストによってEDMと融合。新しい時代のドラムンベースはイギリス、オランダ、ベルギー、アメリカと広がっていき、新たに評価を得ていった。
その一方、Drum’n’Bassの全盛期だった90年代後半に幼少期を過ごした世代がアーティストになり、昔慣れ親しんだリズムを自分の作品に自由に取り入れていったことで、Drum’n’Bassの新たな可能性が生まれた。そのはしりとも言われるPink Pantheress「Break It Off」は、明確にDrum’n’Bassのリズムを主体にしているにも関わらず、EDMなどのクラブミュージックとは違ったポップ寄りなアプローチの曲だ。クラブミュージックとしてフロアのオーディエンスに向けて今の時代に順当に進化したDrum’n’Bassと、Drum’n’Bassの要素を自由な解釈で作品に取り込み、ポップソングとしての再定義をしたDrum’n’Bass。この2つの流れがDrum’n’Bass再燃の鍵であることは間違いないだろう。
日本でも今また、新しいアーティストが生まれている

日本でももちろんDrum’n’Bassを制作をしているアーティストがいる。そのなかでも世界各地の大型フェスティバルにも出演するDJ AKiなどが有名だ。
しかし今回紹介するのは今もっとも私が気になっているアーティスト。海外からの注目度が高く、楽曲のYouTube再生回数が上がり続けている「Dee Jay Key(ディー・ジェイ・ケイ)」である。
そう、この「Dee Jay Key」、先ほどORIXバファローズに楽曲「Happy」が取り上げられたことでも紹介したアーティストだ。
Dee Jay Keyは、今年2022年3月から毎月2曲のペースで新曲をミュージックビデオと共にリリースし続け、今年9月中旬時点でそのYouTubeの動画再生回数はどれも2〜10万越え。それもGecool Music Entertainmentという昨年末できたばかりの小さなレコードレーベルから一切の宣伝もなくただYouTubeにアップして、数ヶ月程度でこの数字だ。多いものではEarth, Wind & Fireのカバー「Fantasy」が8万再生、ORIXバファローズに採用された「Happy」にいたってはなんと10万回再生以上となっている。
ブームが再燃してきたとはいえDrum’n’Bassというジャンルで、ましてや今年デビューした新人がこの再生数というだけでも凄いのだが、このジャンルの第一人者と言われる先ほどのDJ AKiでもYouTubeに投稿している自身の制作楽曲の動画の再生回数は300〜500再生回数程度なのだから、この「Dee Jay Key」が今どれほど注目されているかがよりお分りいただけるだろう。
またDrum’n’Bassアーティストには珍しく1曲ごとのミュージックビデオがかなり豪華で、CGもよく作り込まれている。ヨーロッパのDrum’n’Bassアーティストのミュージックビデオはビッグアーティストにしか制作はされておらず、一般的にはレーベルロゴでアップされているものが殆どである。それを考えるとこのDee jay Keyの所属レーベルGECOOL MUSIC ENTERTAINMENTの熱い意気込みも伺い知れる。
動画のコメント欄はほとんどが海外からのコメントで埋めつくされており(Dee Jay Keyは日本人のようだが)海外の音楽ファンからの支持が熱いのも伺える。
私の聴く限りDee Jay Keyの作る音楽は、今ヨーロッパなどでヒットしている洋楽EDMそのものなのだから当然だろう。よく聴くと80・90年代洋楽へのオマージュを感じさせる音色が随所に使われてることも、音楽的素養の深さを感じることが出来てとても好感がもてる。
経歴などの情報が、今のところネットでもそれほど上がっていないようだが、YouTubeの概要欄には、日本のアーティストである旨や、動画ディレクターとの記載もある。つまりは当然これらのミュージックビデオの制作もしているのだろうか。
そんなDee Jay Keyとはいったいどんな人物なのだろうか、今後の動向が今いちばん気になるアーティストだ。今後また掘り下げて調査しご紹介していこう。