熱パ再来!オリックスが強いとパ・リーグは面白い

143試合目、シーズン最終戦で決めた奇跡の大逆転V!

 2022年のパシフィックリーグの優勝決定は最終戦までもつれた。
 首位は福岡ソフトバンクホーク、開幕8連勝と抜群の開幕ダッシュを切り、シーズンを通して首位争いを展開。主力選手が怪我やコロナで離脱しても活躍する分厚い選手層で優勝までマジック1と迫った。
 それを追う2位オリックスバファローズはまさに最終戦、崖っぷちに追い込まれていた。オリックスの優勝条件はこの日の楽天戦で勝利し、なおかつソフトバンクがロッテに敗れる という条件だった。
 引き分けでも優勝のないオリックスは最終戦のこの試合、4回を終えて0対2の圧倒的不利な立場。 しかもその時点でソフトバンクはロッテに2対0とリードしていた。

 この時点で誰もがオリックスの優勝の確率は10%を切ったと思っていたことだろう。
 そんな状況でも中嶋監督とオリックスナインは奇跡を信じて、5回オモテ 楽天の先発・田中を責め立てると伏見・福田の連続タイムリーで試合をひっくり返す。自力で優勝決定が不可能な状況でも、中嶋監督は攻めの野球を忘れなかった。
今シーズン30人もの投手を1軍で起用し、選手層を経験で厚くした中嶋監督の攻めの采配はズバリ的中した!

 この日の展開を予測したかのように用意周到に相手バッターを撹乱させる体制を作り上げていたのだ。
 中嶋監督の攻めの采配の一つであるピッチャーの起用方法も昨年から変わりはない。先発ピッチャーは無理をさせず出来る限り登板間隔をあけさせる、苦手なチーム相手には極力投げさせない、リリーフには3連投はさせず多くのピッチャーを起用する、2軍からの入れ替えを積極的にし1軍登板の経験を積せた。
 言うのは簡単だが昨年優勝し、今年は連覇と日本一を期待されたオリックスがこの投手の起用方法を取るのはかなりの決断が必要であったろう。
 前年下位で監督も交代したチームが大幅に若手メンバーに入れ替え、チームの若返りを目指したような「 育てることに徹したチーム」のような大胆な投手起用方法なのだから。

 日本ハムのBigBossなら許されるだろうが、これで連覇ができなければ、オリックスは野球ファンの目にどう映っていたのであろう。
 10月2日の最終戦でも先発の田嶋がノーアウト満塁のピンチを招くとベテランの比嘉に交代、その比嘉も打たれ失点してしまっても、 迷わず宇田川、山崎、ワゲスパック、阿部と今シーズンのフレッシュな 投手を次々と投入し失点を食い止めたのだ。これはシーズン中、30人の投手を1軍で起用し、選手層を経験で厚くした中島監督の戦略があればこそだ。
 95年96年と連覇したオリックス・ブルーウェーブの仰木監督が、 97年シーズンに選手の大幅な入れ替えをした。 その時仰木監督の言葉は「 これからずっと勝ち続けるために必要なことだ」 と言っていたことが頭をよぎった。
 中嶋監督が同じようにこのようなことを思っていたとしたら、この若さで末恐ろしい根性の座った監督だ。投手にも打者にも、合理的でかつやる気をもたらす采配だからこそ、選手たちは全力でプレイができるのだ。
 平成の名将・仰木監督が昭和生まれの選手を使い優勝した90年代と、令和の名将・中嶋監督が平成生まれの選手を使いまた優勝させたことは、 オリックスの25年ぶりの優勝として全く違うものと捉えられていたが、真髄は「各々が努力し、その選手を信じ、迷いなく起用する 攻めの決断」が生んだ優勝であり、野球イズムは一緒なのではないだろうか?

 仰木野球のメインはもちろんスーパースターのイチローだった。
 中嶋野球は投打でバランスのとれた優等生・山本、吉田である。
 ピッチャーはもちろん完全無欠の大エース山本由伸だ。まさにエースと言える大活躍で2年連続、最優秀防御率、最多勝、最高勝率、最多奪三振に輝き、2年連続の投手4冠は日本プロ野球界初の快挙なのだ。 シーズン序盤の悪い流れを断ち切ったのも山本だった。
 6月18日の西武戦でノーヒットノーランを達成。 特に後半戦は先発10試合で6勝0敗と好成績を上げた。 ソフトバンクから3勝をあげ、結果的に ソフトバンクからシーズン大きな勝ち越しになった。 今シーズンは26試合に登板15勝5敗、193投球回数、205奪三振、与四球はたった42、防御率1.68と圧倒的だった。
 そしてバッターは絶対的最強打者、吉田正尚だ。パ・リーグには柳田、山川といった大型バッターが多い中、 最強バッターは誰かと問われるとそれは吉田正尚なのだ。
 それは数字でも証明している。 今シーズンの首位打者は日本ハム松本に譲ったが出塁率4割4分7厘はダントツのリーグトップ、 2年連続で最高出塁率のタイトルを収めるとOPS(出塁率+長打力)は1.008で2年連続のリーグトップ。 勝利貢献度を示すWARも リーグトップである。 小柄な体型ながらも振り出すフルスイングは柳田、山川の圧力にも負けないものがある。 優勝を担う9月には月間打率4割1分3厘、7本塁打、得点圏打率4割3分8厘と 最強打者の本領を発揮した。
 土壇場で望みをつなぎ勝ち取ったリーグ優勝、この後のファイナルステージや日本シリーズにも大きな期待ができる。
 この後も中嶋オリックスの 戦いから目が離せない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です