キネマレンズ 7

キネマレンズ オフィシャルフォト

先に言っておくが、私は無類のマイクマニアである。
ダイナミックマイク、コンデンサーマイク、リボンマイク、さらにはバイノーラルマイクまで。
レコーディングや音源制作の現場で数多くの機材を扱い、試し、使い倒してきた。

また、シンセサイザーに至っては一時期30台以上を保有し、さまざまなジャンルの楽曲をアーティストたちに提供してきた。
そんな私が今回注目したのは、キネマレンズが使用する機材である。

キネマレンズ ライブ中の1枚

「派手なデコレーションで注目を集めたAivviyのマイク。JIMAと同じ仕様ながら、その存在感はひときわ異彩を放っていた。」

Aivviyが選んだ“異端の選択”

まずはキーボード機材に触れておこう。
ほとんどのキーボーディストがライブで使うステージピアノといえば、定番は Yamaha CPシリーズ か Roland RDシリーズ だ。

特に「ボーカル兼キーボード」の両立は非常に難しい。
歌いながら演奏すると、プロであってもタイミングやリズムがわずかに揺れてしまう。
だから多くの場合、歌いながらの演奏は単純な白玉音符(ロングトーン)に留め、定番のステージピアノで“無難にまとめる”のが常だ。
実際、プロの現場でも「難しいリズムを歌と並走させない」のは暗黙の了解となっている。

だが、Aivviyは少し違った。
彼女がライブで選んだのは、ステージピアノではなく Korgのフラッグシップ・シンセサイザーで史上最強モデル「NAUTILUS」 だった。

これは、録音スタジオやライブハウスに常設されるような一般楽器ではない。
世界中のトップシンセサイザーアーティストが作り込んだ音色を搭載し、唯一無二のサウンドを放つ“シンセアーティスト御用達”のモデル。
つまり、「EDMを本気でライブで鳴らす」 という意志の表れでもある。

実際、東京渋谷のJapanFinalのオープニング曲「Crazy Night」では、その分厚いシンセサウンドがライブ会場を支配していた。
ライブハウスでレンタルできる一般的なエレピを選ばず、あえて重量級のNAUTILUSを関西から運び込み、音質を優先した姿勢には心底うなずかされた。

機材マニアの立場から言えば、これはまさに オーセンティックでスマートな選択 だと思う。
今後ライブに挑むキーボーディストは、ぜひ参考にしてほしい。

Aivviyのキラキラマイク

ステージ上でひときわ存在感を放っていた、Aivviyの2本のマイク。
左はキーボード&ボーカル用としてマイクスタンドにセットされたメタルブラックタイプ。
右はRap専用に使われる手持ちのハンドタイプ。
いずれもトップデコレーター・三浪氏によるカスタム作品である。

Aivviyのキラキラマイク

次に注目したいのが、Aivviyのマイクだ。
彼女はステージで2本のマイクを使い分けている。

キーボード演奏時:スタンドに装着された黒のギラギラマイク

ラップパート:手に持って使うクリスタルのキラキラマイク

いずれもベースとなっているのは、ドイツの老舗メーカー SENNHEISER e945。
ハイパーカーディオイド型のダイナミックマイクで、不要な音の回り込みを防ぎ、声をそのままの質感で広い周波数帯に響かせる名機だ。

King Gnu、back number、Omoinotake など著名アーティストもライブで使用するほど信頼されている。
JIMA(ボーカル&ギター)はノーマル仕様を使っているが、Aivviyはこれを大胆にデコレーション。
「これって何のマイクなの?」と思わず二度見してしまうほどの華やかさをまとっている。

デコレーションを手がけた人物

このマイクを飾ったのは、大阪市福島区に工房を持つ、スワロフスキー・クリスタルデコレーション界の第一人者 三浪 昇(みなみ・のぼる)氏。
元お笑い芸人というユニークな経歴を持ち、タレントや芸人からも依頼が絶えないトップデコレーターだ。

実は過去に「マイクをデコレーションしてほしい」という依頼があったが、そのときは「マイクは未経験だから」と断ったという。
後に知った依頼主は、なんとアーティスト“ちゃんみな”の関係者だった。
今回のAivviyのマイクが、三浪氏にとって“マイク初デコレーション作品”となった。

「 三浪氏の言葉」

【キネマレンズ × マイクデコレーション ― 非日常への煌めき】

マイクへのクリスタルデコレーションは、その存在感が時に「持つ人」や「歌い手」よりも前に出てしまうことがあります。だからこそ、今回ご依頼をいただいた際は、正直色選びには迷いもありました。

ロゴを強く主張するのではなく、彼らの世界観を表現したい。
見る人の角度やそのときの気分によって、さまざまな感情を呼び起こすような「繊細なモノクロの美」を意識しました。

実際にライブでその姿を見たとき、音・声・照明・表情が絡み合う非日常のドラマチックな空間に深く引き込まれ、この選択でよかったと心から感じました。

メタリックブラックという色は、華やかに目立つのではなく、空間に溶け込みながらも確かな存在感を放つ──まさにキネマレンズの世界観と強く響き合っていました。

今後も「彼らだからこそ持てる」唯一無二のマイクデコレーションを生み出せれば光栄です。

キネマレンズ ライブ中の1枚
キネマレンズ ライブ中の1枚

「三浪氏のプロフェッショナルの仕事」

やはり、一流のプロフェッショナルは違う。
作品に自我を押しつけるのではなく、対象を理解し、未来までを見据え、空間に溶け込む表現を創り出す。

今回のマイクも、メタリックブラックとクリスタルの2本が完成するまで、粒の大きさを変えながら一つひとつを組み合わせる気の遠くなるような作業が繰り返された。
そうして誕生した2本は、実際にライブで使われ、ステージの輝きを一層引き立てた。

値段を聞くのは野暮だが、それ以上にアート作品としての価値を感じさせる仕上がりだった。

キネマレンズのライブでは、音や演奏だけでなく、Aivviyが手にする キラキラのマイク にも注目してほしい。
それは単なる装飾ではなく、音楽の一部としてステージを彩る“もうひとつの楽器”になっているのだから。

QynemaLens:
(読み キネマレンズ)2024年に大阪で結成された3人組ユニット。
EDMの先鋭的なサウンドと邦楽ポップの叙情性を融合し、シーンの常識を軽やかに越える音を鳴らす。
結成からわずか数か月で世界最大級のバンドコンテスト「エマージェンザ大阪決勝」で優勝を果たし、実力と共感を同時に証明した注目の存在。
この特集では、彼らが生む革新の音楽と、その奥に宿る誠実な衝動を解き明かす。